1980年代初頭に新型のベージュ色の箱(私の場合は、もし間違っていなければApple IIeだったと思います)や、数年後に登場した「新しい」Nokiaの携帯電話に多くの時間を費やした(いや、正直言うと無駄にした)人にとって、スネークゲームのヘビのイメージは、砂糖や着色料、ミルクでできた「栄養たっぷり」の朝食と同じくらい馴染み深いものでしょう。
そして、まだ老眼鏡を必要とするほど年を取っていない皆さんのために説明しますと、ヘビ ゲームは非常にシンプルなデジタル表現のヘビが登場するゲームでした。このヘビは楽しげにリンゴを食べ(良いこと)、どんどん体が伸びていきます(悪いこと)。その結果、動きが鈍くなり操作が難しくなる一方で、どんどん動きは速くなっていくというものでした。
現在のCTOにとって、このビジネスの例えはわかりやすいものですが、少しひねりがあります。企業が成長する中で、主要なビジネスニーズに対応し、悪意ある行為者、脅威、脆弱性に対抗するために、次々とポイントソリューションを追加してきた結果、その環境は、あの成長し続けるヘビのように、どんどん大きくなり、管理が難しくなっているのです。
しかし、成長するにつれて速くなるだけのヘビとは異なり、現実の世界では、環境は成長(そしてさらなる成長)するにつれてますます遅くなり、俊敏さを失っていきます。
テクノロジーの世界では、イノベーション(つまりリンゴを食べること)は止まることがないため、技術の「ヘビ」自体がどん どん大きくなっていきます。そして、サイバーセキュリティにおいても、他の多くの分野と同様に、計画、購入、実装、セキュリティソリューションの調整に時間と労力を費やしたにもかかわらず、不都合な真実として、複雑さが増すことで、摩擦の増加、応答時間の遅延、さらには脆弱性の増加という、まさに期待とは逆の結果を招いてしまうことがほとんどなのです。
たとえ最新で最も洗練された技術を精査し、購入し、導入していたとしても、問題はここにあります。ヘビは決して動きを止めず、業界が絶えずイノベーションを続ける中で、貴社のピカピカの新技術も突然「最新」ではなくなり、気がつけば、どんどん成長するヘビの後尾に向かって後退し始めるのです。
このため、購入の決断が一層難しくなります。いつ決断を下すべきか?今すぐ購入すべきか、それとも数か月待って状況の変化を見極めるべきか?
私の友人の一人は、新しいMacが発売される直前に必ずMacを買い替えることで有名でした。彼は5年に一度くらいしか新しいコンピューターを買わないのですが、なぜかそのタイミングが絶妙に悪く、せっかく手に入れたピカピカの新しいマシ ンが、すぐに時代遅れになってしまうという不運な才能を持っていたのです。
同じ概念は、テクノロジー全般にも当てはまります。メールセキュリティを例に挙げましょう。長い間、ゲートウェイ製品が最先端(言い換えれば、ヘビの頭)とされていました。ゲートウェイ製品は、組織のメールサーバーに届く前にすべての受信メールをスクリーニングする役割を果たしていました。このアプローチは、企業のメールがクラウドホスティングされるずっと前から存在しており、メールサービスがクラウドへの自然な進化を始めた後も、事実上の標準的なソリューションとして使われ続けていました。
しかし、技術の「ヘビ」はリンゴを食べ続け、気がつけばゲートウェイやゲートウェイ技術そのものがスタックの中で後退し、今日のイノベーションがあっという間に明日の技術的負債になってしまうのです。
メールセキュリティに対する最新のアプローチは、ゲートウェイをはるかに超えるものであることは明らかです。現在では、クラウドメールのAPIやその他の技術進歩を活用することで、メッセージ配信プロセスのどこかで見逃された攻撃を特定することが可能になっています。これにより、不正な電子メールがもたらす潜在的な影響を追跡することもできます。
この比 喩は、セキュアアクセスサービスエッジ(SASE)の領域にも同様に当てはまります。かつては、各企業が認証、認可、DLP、CASBなど、幅広い技術をそれぞれ独立して導入していました。これらのアプローチは比較的互いに独立して進化してきましたが、結果としてヘビはさらに長くなり、これらのソリューションを所有する買い手は、意図的に統合されたアプローチによってより高い価値と俊敏性を示す新しい技術が登場することで、ヘビの前方からさらに遠ざかってしまった状況に直面しています。
言い換えれば、短期的な進歩をどのように長期的な利益へと転換すればよいのでしょうか?
私は、貴社独自のビジネスが競争優位性として依存している、存在的に重要な少数の要素を特定することが役立つと感じています。それらの優位性を直接支える技術は何でしょうか?その技術の変化がどのように結果や影響に結びつくのでしょうか?これを考えることで、必要なツールの短いリストが得られ、膨大なノイズをかなり排除することができます。
そこから、リーダーは、テクノロジーが絶えず自らを変革する一方で、成熟するにつれて統合される傾向があるという事実を活かすことができます。
統合に関して言えば、ほとんどの現代企業は、ポイント製品の時代は終わり、プラットフォームの時代が到来したという認識で一致しています。分散したポイント製品を重視するのではなく、さまざまなツールや機能がシームレスに連携するよう慎重に設計されたプラットフォームを採用することが、間違いなく正しい道です。プラットフォームとそのコンポーネントが将来まで拡張性を持って設計されていれば、これにより貴社とチームの時間、手作業、パッチワーク、労働時間を節約することができます。
もちろん、単一のプラットフォームが企業のすべてのニーズを満たすことを期待するのは現実的ではないかもしれません。多くの企業が独自のワークフローやプロセスを持っていることを考えれば、なおさらです。それでも、これは依然として優れたモデルであり、目指すべきゴールです。構成要素が少なく、プラットフォームソリューションがよりネイティブに設計・統合されていればいるほど、それらがシームレスに連携し、管理が容易になります。
AIを取り入れると、物事はさらに複雑になります。さまざまなAPIや技術が存在する中で、CTOは次のような疑問を自らに投げかけています。「AIをどう採用すればよいのか?これまで何年もかけて追加してきたさまざまなソリューションや技術とどのように連携させればいいのか?それらのプロバイダーは、実際に会社のデータをどう扱っているのか?会社のデータをAIモデルのトレーニングに使っていないとどうやって確信できるのか?」明らかに、規制の世界はグローバルなAIの普及に追いついておらず、多くのCTOは、荒野のようなAIの世界で自力でやりくりしなければならないと感じています(あのヘビ、もしかしてヴィンテージのカウボーイハットをかぶっていませんか?)。
今日のAIの爆発的な普及は、1970年代や1980年代初頭のコンピューター黎明期に少し似ています。当時、若い私はデジタルのヘビにリンゴを食べさせ、小さな白黒画面をほぼ埋め尽くすまで遊んでいました。その一方で、企業は競争に取り残されまいと、こぞってコンピューターを導入しようとしていました。しかし、こうした奇跡のようなデバイスが、どのように職場の効率性と生産性を高めるのかということはあまりわかっていませんでした。この状況、どこかで聞き覚えがありませんか?今日のAIについても同じことが言えます。誰もAIを採用しないことで取り残されたり、イノベーションで出遅れたりしたくありませんが、多くの企業は、技術スタックや組織戦略にAIを意図的かつ効果的に組み込むためのアドバイスや適切なノウハウをまだ模索している段階です。
AIをただ導入すること、あるいは取り残されたくないという理由だけで導入するのは不完全な計画です。しかし、例えば、カスタマーサービス企業に目的を持って導入すれば、すぐに効率性と削減効果が得られます。適切なAIの実装が技術プラットフォーム全体で行われれば、大きな効果が期待できます。例えば、AIを活用して適切なサイズのトラックを顧客の問題解決に派遣することが可能になり、そのAIエージェントから得られた情報を配車システムや顧客に共有することで、適切な経験を持った技術者が、必要な部品やツールを持って現場に向かう準備が整います。
では、私から1つ提案しましょう。今後の進むべき道は簡素化することだと考えています。簡素化は今後、企業戦略のますます大きな部分を占めるようになります。もちろん、市場経済の力がパートナーシップや買収を通じてある程度この問題を解決するとは思いますが、悲しい現実として、すべての技術が同じではありません。そして、プラットフォームエコシステムのすべてを、あらゆる機能に対応できるように設計しているわけではないにしても、Cloudflareが際立つのは、すべての技術をシームレスに統合し、プラットフォームとしてまとめ上げる能力です。これが「簡素化」を生み出し、簡素化は強さであり、また効果的でもあります。
現在、簡素化を実現する方法は、統合プラットフォームアプローチを採用することです。このアプローチでは、日々あなたやチームが使用するツールが、最初から連携するようにネイティブ設計されており、組織内の異なるチームが物理的にも仮想的にも簡単にコラボレーションできる環境を提供します。
さて、欠点はあるでしょうか?変化そのものにはコストが伴います。時間と計画が必要なのです。しかし、攻撃対象領域が小さく、シンプルで統合されたシステムは、長期的に見れば間違いなく価値のあるものとなるでしょう。一時的に複数のプロバイダーを運用する必要があるかもしれませんが、真に問うべきは、「簡素化を実現するためにどこまで努力するつもりなのか?」ということです。チームに複数のポイントソリューションを管理させることは、非効率化を助長し、知識の分断化を進めます。そして、寄せ集めたセキュリティ環境はますます扱いづらくなり、セキュリティチームはますます重く成長する仮想のヘビを引きずり回す羽目になるでしょう。
現代の多くの企業は、ベンダーに単なる販売者以上の役割を求めています。組織の延長線上にある存在、つまりビジネスパートナーやアドバイザーのような役割を果たすことを期 待しているのです。
新機能が開発されると、その新機能を意図的に既存の環境に可能な限りシームレスに統合できることが、引き続き大きなセールスポイントになります。これが当社の主要な差別化要因の一つです。他社と異なり、私たちはすべてのツールがシームレスに連携できるように設計するための時間を惜しみませんでした。その結果、Cloudflareの全体は、その構成要素の単なる総和以上の価値を持つと、お客様に評価されています。
Cloudflareでは、自社をお客様のコンサルティングパートナーであると位置付け、お客様が当社の製品から最大限の利益を得られるよう、真にカスタマイズされたサービスを提供することに注力しています。当社の製品は非常に優れた機能を持ち、お客様に価値を提供するだけでなく、導入が非常に簡単であり、将来にわたって一貫して機能することが信頼されています。
この記事は、技術関連の意思決定者に影響を及ぼす最新のトレンドとトピックについてお伝えするシリーズの一環です。
新しいタイプのクラウドでITとセキュリティの複雑さをどう克服できるかについては、Forresterの調査レポート『コネクティビティクラウドでコントロールを回復』をご覧ください。
Mike Hamilton – @mike-hamilton-us
Cloudflare CIO
この記事では、以下のことがわかるようになります。
ポイント製品が生み出した悪循環
複雑さを簡素化する方法
安全な未来を実現するためのシームレスな統合の役割